金融所得の増税について

格差是正というお題目のもと、金融所得の増税について最近よく話題にされている。
これについて私の考えを述べたい。

まず私は、金融所得の増税をすること自体には賛成だ。
増税せずとも無限に国債を発行すればよいというような暴論を聞くことがあるが、それは間違っている。例えば国債を2倍発行しても価値が1/2になればまったく意味がない。無制限に発行するとなればいったい国債の価値はどれだけ下がってしまうだろうか?つまり何が言いたいかというと、インフレ率が高くならない程度までしか国債は発行できない(しても意味がない)ということである。
まあ、日本の場合はまだまだインフレ率が低いので、そういう意味ではもっと財政出動してもよいとは思うが。話は戻るが通貨の信用を維持するためにもある程度はプライマリーバランスは考えておくべきで、適正な財政出動をしたうえでなら増税も仕方がないと思っている。

ただし、どのように増税するかは慎重に考えないといけない。総理が発言し大バッシングとなった一律30%案はアホの極みだ。

なぜ30%まで上げたいのかの説明として1億円の壁問題が上げられる。これは、所得税累進課税なのに対し、金融所得課税は20%固定のため1億以上の所得を持つ人の所得税率が低くなってしまうという問題だ。(あくまでも税率が低くなっているだけであり払っている税金が庶民より低いというわけではない)

確かに累進性が失われているのは問題だが、これは金融所得課税を30%に一律増税したところで解決しない。むしろそれで割を食うのは庶民だ。そもそも一般的な年収の場合の所得税率が20%なので、もし30%まで金融所得課税を増税されると本来払わないといけない累進税率以上のお金を納めることになってしまう。

ではどうしたらよいか?私はシンプルに総合課税にすればよいと考えている。つまり通常の所得と金融所得を合算してそれに対して累進課税をかければよいのだ。ただ、これは導入が難しいことは容易に想像できるので、まずは配当益だけというように段階的に適用していけば良いだろう。売買益についても累進課税になることが理想だが、これまでとの差分が大きすぎて導入コストが膨らむため、見送りが無難かと思われる。

ただ、それでも一律で30%に上げる方がシステム的に考えていても楽だというのはわかる。しかし、もし一律で30%に上げたいのであればNISA制度を根本的に見直してもらいたい。通常NISAの投資枠120万は小さすぎる。NISAの趣旨としては中長期投資を推奨しているのだとは思うが、弱小投資家は中長期に回せる資金が少ないため稼ぎたいと思えば資金を高速に回転させて短期投資をするしかない。しかしそんなことをすれば一瞬でNISA枠はなくなり、お金持ちと同じ土俵である税率で勝負しないといけなくなる。
保有期間を短くする代わりにNISA投資枠を増やせるとか柔軟性のある仕組みにしてほしいところだ。または、NISA枠で購入したものを売却すればNISA取引可能額が戻るとか。

ただでさえ年金に頼らず老後資金2000万円を自前で用意しろと言われており投資を推奨されていたのに庶民のことを考えない増税案を出すのは本当に勘弁してもらいたい。